花咲く頃に
『またはぐれたりするなよ。』
『…グスッ。う、うん。』
『仕方ないな。ほら。』
『えっ?』
あれ?
うちって迷子になって泣いたんだっけ。
そしたら、今の伊藤くんみたいに、一緒にいた子が見つけ出してくれたんだ。
泣いてたのに、突然手を握られて。
びっくりしたら涙がおさまったんだよな。
なんでこんなに思い出せるんだろう。
昔と今がすごく重なっている…
今だって。
「仕方ねぇな。少し我慢しろよ。」
「う、うん。」
歩き出したのはいいけど。
今度は手を繋いだまんま。
心臓が、ドクンドクンって騒いでるけど、自分が申し訳ないよって言ってる。
我慢なんて、してないもん。
むしろ、喜んでいる自分がいる。