花咲く頃に


『またはぐれたりするなよ。』

『…グスッ。う、うん。』

『仕方ないな。ほら。』

『えっ?』

あれ?
うちって迷子になって泣いたんだっけ。

そしたら、今の伊藤くんみたいに、一緒にいた子が見つけ出してくれたんだ。
泣いてたのに、突然手を握られて。
びっくりしたら涙がおさまったんだよな。

なんでこんなに思い出せるんだろう。
昔と今がすごく重なっている…

今だって。

「仕方ねぇな。少し我慢しろよ。」

「う、うん。」

歩き出したのはいいけど。
今度は手を繋いだまんま。

心臓が、ドクンドクンって騒いでるけど、自分が申し訳ないよって言ってる。

我慢なんて、してないもん。
むしろ、喜んでいる自分がいる。
< 80 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop