花咲く頃に


『花火綺麗だね~。』

『うん。美桜花火大好き。』

『ぼくも好きだよ。』

そっか。
うちは昔、自分のことを名前で呼んでいたんだ。

…何だろう。
この後って確か…

見ちゃ…いけない記憶…

ドンッ

『危ないっ!』

あぁ。
だから記憶から消えていたんだ。

…思い出しちゃった。
忘れたかった現実を。


『美桜ちゃん、危ないっ!』

『きゃぁぁぁ。』

うちの近くに花火が落ちてきた。
それなのに、うちは足が固まっちゃったんだ。

恐怖のあまり、腰が抜けて立ち上がれなかった。
< 87 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop