姉さんの彼氏は吸血鬼 孝の苦労事件簿①

「『セレナ』。セレナ=エステバンって言ってたかな……」

「セレナ!?」

瞬間的に、エリアルが叫んだ。それまでの、柔和な雰囲気が消える。

「……知ってる人?」

何となく尋ねると、エリアルは黙って頷いた。

「そういえば……孝にはまだ、話してなかったよね。
僕が、日本に来た理由」


「え?ああ。……それが何?」

どうでもいいけど、と言葉を繋げられなかった。
様子からして、只事じゃない。

……エリアルはまた、『吸血鬼の顔』になっていた。


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