姉さんの彼氏は吸血鬼 孝の苦労事件簿①
夜中の話
月の無い夜中のビルの屋上。
「あら、案外思ったより早く来たのね。
こんなにすぐ、あなたに結びつくとは思ってなかったわ……」
空中からそこへ近付く影を見ると、女独特のねっとりとした声が笑った。
「やっぱり、お前か……」
影はエリアルだった。
彼はコンクリートの枠の上に降り立つと、
ロングコートをマントのように翻し、唸るように呟いた。
すると、女は喉の奥でくくっと笑った。