姉さんの彼氏は吸血鬼 孝の苦労事件簿①
彼女は、少し小走りになった。
大丈夫、ちょっと我慢すれば、もう着くんだから……。

建物は、夜と昼で違う顔を持っている。

昼間、あんなに明るかった建物の顔は、
暗い中でこんなにも冷たくて素っ気無い。


そうだ、家に電話しよう…
…今の時間なら、もしかしたら孝が家に帰っているかもしれない。

仮にそうでなくても、エリアルは必ずいる。

小夜子は、ポケットから携帯電話を電話を出した。

かくかくと震える指で、キーを打つ。

歩調に合わせて携帯が揺れるので、画面が見づらい。

ああ、違うメールじゃないのに……。
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