風神さん。
序章


「お嬢ちゃん、下手な抵抗はやめとけよぉ…男三人相手に素手の女のコじゃあ分が悪いことぐらいわかるだろ⁇」

一人、スキンヘッドの男がそう女に言ってのけた。
ギロリと飛び出た目玉は女を舐め回すようにして屈辱を与えようとする。

一人は先ほど言ったスキンヘッドの男、もう一人はドレッドヘアーの男、最後にパーカーのフードを深くかぶった男。

どうやら、金目的のついでに女の体も目的としているようだ。

そう、私は弱い。とても弱い。

女は、聞こえないようにそっとつぶやいた。
女の小さい声はこの湿気た路地裏に溶け込んでゆく。

「あ?なんか言ったか⁇」

スキンヘッドの男は、眉間に深いシワをよせて女を睨みつける。怯える様子がない女に何か違和感と苛立ちを感じているようだ。

女は、短いワンピースのすそを持ち上げる。
現れた女の白い肌に三人は目を奪われたのと同時に、目をさらに見開かせる事となる。

女の両足の太ももには、隠すようにしてつけられた細いベルトが巻かれており、片方は拳銃、もう片方は刀の"柄"のようなものが備え付けられていた。

男たちは、女が反撃に出ようとしている事を察した。
てめぇ、ととっさに出た言葉と腕で女を押さえつけようとするが、一つテンポが遅かった。

男の眉間には、シワの代わりに銃口があてがわれていた。
安全装置を外す音と、共に。



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