風神さん。


膨大な魔力の塊が小さな塊に集中させた弾丸が、標的に届くまで瞬きをする暇すら与える事はない。
シュベロの張った煙のバリアでさえもたやすく突き破る。
シュベロの、もう、目の前に来た時。
声から出たのは掠れた悲鳴で。
何もすることが、できなかった。

仲間のポスカがあわてて、バリアスタンプと呪文を叫びシュベロにバリアを張った。
だが、それもたやすく破られた。
ポスカはそれに負けじと次々とバリアを張った。
当然、瞬時に、かつ複数もの魔法を続けて繰り出すのは魔力の消費が激しい。
魔力とは生きる力のようなもので、急に使い果たしたり、失ったりすると気絶、もしくは命に関わる自体になる事もある。

「やめ…ろ…………」

とうにポスカの魔力は底を尽きているはず。現にポスカの足はふらつき、立っているのもままならないようだ。
しかも、魔法が破られるたびにポスカは何か重大なダメージを負っている。
とうとう、ポスカは自らの血を魔力に無理やり変えて魔法を繰り出しているようだ。自らの血肉を元とした魔法は、自らとリンクする。
だから、張られたバリアの魔法が壊されるたびに、ポスカはダメージを負う事になる。

そのポスカの防御が続いたのは7秒ほど。決してポスカの魔力が弱いせいではない。
弾丸の威力が、強すぎるせいだ。

その、7秒後に、なぜポスカの防御ができなくなったかというと。
もう一人の仲間のマスクを被った、シリアルという男がポスカの意識を無理矢理奪った。
そして、シュベロを突き飛ばした。

「シリア「シュベロさんだけで」

シリアルの腹直筋に弾丸がこつり、と触れたのを確認した後の意識は、強風と共に吹き飛ばされた。



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