風神さん。
「僕も、孤独…この獣は人懐っこいんだ、今出会ったばかりだよ」
落ち込んだように寝転ぶ獣に、男は優しく撫でた。
「僕と友達になってくれない?」
また、薄い笑いを浮かべる男。
私は、握りしめた拳を一層汗ばんだのを感じた。
「…友達になってどうするの」
わけがわからなかった、やはり、あまり人と関わったことのないせいか意図が読めない。何を考えているのかわからない。何がしたいのか分からない。
「この子みたいに、一緒に居るだけでいいんじゃない?僕もこんな関係を築くのは初めてだから」
口数が少ないと思っていた男は、急に饒舌になった。おそらく、先程の私の質問を肯定と捉えたんだろう。
「名前は」
「ない」
私の質問に、間髪を入れずとはこの事。目も合わせずに、短く答えた。
胸が締め付けられるような、悲しい気持ちになった。
「じゃあ何て呼べばいいの」
私は、なんとも冷たい奴だと自分で嘲り笑いたくなる。
でも、こんな時私は何て言えばいいかわからない。
間違っている事は、なんとなく分かって居るんだけども。
「ん、じゃあ、お兄さんで」
私は目を見張った。てっきり、今ここで何か名前かニックネームでも決めるのかと思っていたのに。
そんな私に、わざとおどけたように
「お姉さんじゃないでしょ?僕男だから」
なんて分かり切った事を言う。そんな事を言いたいわけではないんだけども。
私はただ黙った。
「君の名前は」
次に質問したのはお兄さんのほうだった。
「カンナヅキ」