風神さん。
夕日がもうすぐ沈みかける。獣に別れと、お兄さんに別れを告げる。
一際明るい星だけが目で確認できる。
「じゃあ、お兄さん…」
「うん、またね」
お兄さんと私は立ち上がった。お兄さんは思っていたよりも、背が高かった。
綺麗な容姿だし、背も高いから村ではきっと人気者になるだろう、と私は思った。
なのに、どうして孤独だったのだろう。
お兄さんは、世界や色んな事を教えてくれたけれど、お兄さんの事は教えてくれなかった。
でも、これから教えて貰えばいい。
「お兄さん」
お兄さんは、なんだい?と大袈裟に首を傾げてみせた。
「明日も、会えるよね」
「当たり前だよ、明日からは魔法を教えてあげるんだから!…明日も、また、ここで」
その言葉に私は安心した。
また、別れを告げ背中を向けた時には、日が沈み切っていた。
私は暗闇でも目がすぐ慣れるし、道にも慣れて居るから、帰るのになんて事はないんだけど。
お兄さんが帰り道、困るんだったら私が案内しようか。ここらへんは獣と狩に毎日行って居るから、私の庭のようなものだから。
そんな、言い訳をしてでも長くお兄さんと居たかった。
そう思って、振り返った。
だけど、そこには誰も居なく、とぐろを巻いたような闇が広がっていた。