風神さん。
月日はどれほど過ぎただろうか。お兄さんとの別れは突然やってきて、お兄さんのもう一つの名前を知ることになった。
私が早朝、村から抜け出そうとした所、村の唯一の出入り口で私は村長に呼び止められた。
この村は高い塀で守られていて、この出入り口が塞がれたら、やっかいだ。
それに、村長は今まで私に話し掛けた事が無かったのに。
村長は、しわがれた声で私にゆっくりと尋ねた。
「お前、村人以外の誰かと会っているな」
私の鼓動は警報のように強く鳴り響く。まずい。そう思ったのが最初。
首を横に降る。が、嘘だとばれる。
「一体誰と会っている」
誰と、と尋ねられると私でも分からない。むしろ教えてほしいくらいなのに。
私が押し黙っていると。
「お前も、母親と同じ罪を犯すのか」
村長のその言葉に、私の鼓動は一気に静かになり、冷たい、何かが私の心に広がった気がした。
声も、顔も、名前も、何もかも覚えていない。けど、わたしの母親だから、侮辱されるのに怒りを覚えないわけがない。
お兄さんは、言ってくれた。使い方と、場所さえきちんと判断すれば、私の友達たちは私を救ってくれる、と。
私は始めて、お兄さん意外に私の友達の力を披露する事になるだろう。
ざわめきだす木々を見た村長と村長の周りにいた村でも強豪の男たちは騒ぐ。
村長は、声を荒げた。
「まさか、お前魔法を…‼︎」
私は意地悪く口角をあげた。怯える村の皆の顔が心地よかった。今までは、私が村の皆に怯える生活だったのが、一転したようだった。
「だったら?」
「カンナヅキ、お前に村の追放の刑を命じ」
村長の命が言い切る直前、言葉をかき消すような強い風が吹いた。
この風は………‼︎
「お兄さん…!?」
「風神、様…!?」
私の喜びの声と、村長達の動揺を隠せない声が入り混じった。