風神さん。
「さっそくこの依頼主の元へ行こうか!」
男の子は椅子から立ち上がり、変わらぬ笑顔でそう言った。
その言葉にカンナヅキは驚きながらも、共に立ち上がると、見計らったようにイリーナがアップルティーの無くなったカップをさげる。
カンナヅキはお礼を言う。
「私、まだここのギルメンとかなってないんだけど…ほら、ギルド紋章だって」
カンナヅキは先々歩く男の子を追いながら、男の子にギルド紋章が刻まれている所と同じ場所、首に手をあてがいながら話す。
男の子はギルドの門を開けながら、悪戯っ子のような笑い方をする。
「大丈夫だよ、正式なギルメンになるには、ギルマスのティアが居なきゃどうせなれないし!それにあいつ、なんか魔導会の偉い方に居るから、中々このギルドに居ることも少ないからね」
カンナヅキは呆然とする。
ギルマスがすごい人という事が分かった事と、なんだかゆるい所と。
「ティアだって認めてくれるよ、お姉さんなら…いっそ、僕はティアにお姉さんを会わせたくないくらいだけど」
扉を開け、外に出て一歩男の子はそう言って歩みを止めた。カンナヅキも止める。
「どういうこと?」
「…会えばわかるけど…お姉さんがそれくらい素敵な人ってこと!」
無垢な笑顔をカンナヅキに向ける男の子。
カンナヅキはまた呆然してしまう。突然の、言葉に。
男の子はさぁ行こうか、と今度は今まで見ていたような、柔らかく笑う笑い方をしながら、カンナヅキを見やりながら、また歩き出す。
カンナヅキは男の子の言葉を理解出来ないまま、また、後を追う。