風神さん。


「これだけ近いならさ、ぼーやの魔法でぱぱっと来れたんじゃない?」

カンナヅキは、後に馬車のお金もかかるし、と付け加える。
男の子はぼーやじゃなやい、と言うのも忘れたように、図星とも驚愕ともとれるような表情をわざと浮かべる。
カンナヅキはどっちの表情?と尋ねると、今度はおおげさに顔を両手のひらで覆い、悲しそうな顔をする。

「お姉さんって酷い…風魔法は魔力を凄く消費するのを知っていてそんな事を」

「おっきな竜巻私にぶつけてもけろっとしてたよね?」

そうカンナヅキが鋭いつっこみを入れたと同時に、馬車は止まりサザンカについたと声がかかった。

「さ、お姉さん、ついたって!」

男の子は目を泳がせながら馬車を先に降りようとする。
カンナヅキはそれに何か一言毒づいてやろうか、と思いながら馬車から降りる。

が、カンナヅキのそんな思考をかき消すようなサザンカの賑やかさに思わず、息をのんでしまった。
目の前に広がったのはこの町へ訪れた者を歓迎するような、大きな門のアーチ。
細かな装飾はされていないが、目をひく大きな「おいでませ サザンカ へ」という文字。
カラフルな門の左右にはカンナヅキ達のように馬車で来た者たちが利用できるような馬車が数台も留まれる大きなスペースがあった。
これだけで、サザンカという町は相当大きいものだと伺える。



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