サイコーに愛しいお姫様。
うつ伏せになっている男の右腕を掴んでねじ伏せようとした瞬間、奴の左手が俺の頬をかすめる。
「おとなしくしろっ!抵抗してんじゃねーよっ!」
「土屋くん!」
後ろから遅れて走ってきた瀬名さんの手が俺の体とストーカー男の体を離す。
「瀬名さんっ……何するっ……」
なんか顔が熱い……気がついたらポタポタと赤い血が流れていて……
「来るなっ!来たら刺すぞっ!!」
そう。奴の手にはナイフが握られていて俺はそのナイフで顔を切られた。
浅い傷だからたいしたことなかったけど。
「住居侵入、銃刀法違反、殺人未遂、完璧に実刑ですよ?野口さん」
やっぱり野口って客だったのか。俺は初めて見る男。小柄で年齢は30前半?
かなり挙動不審で完全に動揺していた。ていうか俺のほうは完璧にキレていてナイフの存在すら気付かなかった。
瀬名さんがいなかったらこの男に刺されてたかも。