サイコーに愛しいお姫様。
―一翌朝。慣れない指輪を左手薬指につける俺。
「今日こそは飯食いに行こう」
「うん……」
どこか元気のないなお。きっと花梨ちゃんのこと考えてるんだ。
昨日レストランに誘ったのも、もともとは元気のないなおを気分転換させるためにだったんだっけ。
この世には悩んでも仕方のないこともあるんだからさ。
いつもの通勤風景。
たくさんの女子高生とすれ違うけど花梨ちゃんの姿はなかった。
さすがに昨日の今日だから花梨ちゃんは時間をずらして俺には会わないようにしてるかな?
ま、それが普通か一一……
「土屋さんっ!」
「え?」
いきなり後ろから女の子に声をかけられてビックリする俺。
「おはようございます」
一一あ。それは今まさに出会うなんてあり得ないと思っていた花梨ちゃんだった。
昨日泣いていた彼女の顔は今日はとても穏やかに優しい笑顔で俺に話し掛けてきてくれた。
「これハンカチ。昨日、私持って帰っちゃってごめんなさい。ありがとうございました」
「ああ……わざわざありがとう」
ハンカチを受け取る時に昨日までつけていなかった俺の結婚指輪に目がついたのか花梨ちゃんはクスッと笑った。