短編集
君は全然分かってない
久しぶりに会う友達。
何年かぶりに会う旧友達はもうお酒も飲める年になり、気分も上がり始めている。
時刻はpm19:38。
中学時代のクラスメート達が集まり、地元の広い居酒屋で5年ぶりかになる同窓会を開いた。
遠くに行ってしまい、集まれなかった人もいるがだいたいの人数集まり、数時間経った今はもうあの日と同じように賑やかになっている。
昔話に皆がそれぞれ盛り上がってきた頃、遠くで自分を呼んでる声がした。
「奈々瀬ー!」
昔の女友達と談笑していたあたし、菊地 奈々瀬は声がする方に顔を向けた。
声の主は、結構仲の良い男友達だった。
「なにー?」
あたしは、友達に一言言ってから立ち上がり、その男友達の所に歩み寄った。
すると、そいつは自分の携帯をあたしに差し出してきた。
「え・・・?」
あたしは意味も分からず、ただ側に立っていた。
携帯は通話中なのか、画面が点いたままだ。
「晴斗が迎えに来いって」
晴斗。懐かしいその名前を友達は何の気なしに言ったのかもしれない。
この男友達と晴斗という男はとても仲の良かった間柄だし、中学時代はよく3人でも話した。
だけど、今はそんなことはどうでもいい。
あたしの耳にその名前が入った瞬間、ドキリ。と鈍い音が心臓の奥で鳴ったような気がした。
それが、何故なのか理由はよく理解している。
そんなあたしの反応を見て、しびれを切らしたのか、
「いいから、とりあえず今は出ろ」
携帯を更に差し出した市原という男友達は、鈍い音の理由を知っているくせに、通話をするよう催促した。
仕方なく、その携帯を手に取り機会越しに聞こえる音を待った。
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