短編集
*********
ガチャ・・・
20分くらいしてようやく着いた駅は、やはり利用者が少なくて人影が無い。
雪も降っているためか、交通量も少なくスムーズに運転する事ができた。
車から降りて、駅にいるだろう彼のもとへと向かう。
運転中から高鳴っているこの感情をどうにか押さえ込もうと、近くにあった自動販売機で暖かいミルクティーとココアを買った。
中に入ると、背を向けてベンチに座っている一人の男性の後ろ姿が見えた。
背中が昔よりも大きくなったような気がしたけど、あの座り方は確かに晴斗だ。
ふう、と少し息を吐くと意を決したように歩み寄った。
「・・・晴斗?」
少し声が震えた気がした。
「・・・奈々瀬」
振り返った晴斗は少し気まずそうにしていて、それがなんだかひどく傷ついた。
ああ、やっぱり。
罪悪感が消えていない彼の表情からは再会の喜びは感じ取れなかった。
「寒かったよね。これ、どっちか選んで?」
そんな悲しみを表に出さないように、先ほど買ったばかりの暖かいミルクティーとココアを差し出した。
「いや、中にいたからそれほど寒くなかった・・・。ありがとう」
迷わず、ミルクティーを選んだ彼に、変わってないな、と笑みが浮かんだ。
「いくらだった?」と財布を取り出し払おうとした晴斗に、あたしが飲みたかったののついでだから、とやんわり断った。