クローバー
「ユリちゃん」

ユリの母親が立っていた。

迎えに来たのだ。



「おばさん!!」

ここぞとばかり、僕の悪事を言いつける女子たち。

おばさんは困ったような笑顔を浮かべて聞いている。



僕は顔を上げられなかった。

唇をかみ締めながら黙って下を向く。

視線の先には土で汚れた上履きがあった。



「コウタ君、いいのよ、気にしないで」

おばさんのやさしい声が僕の頭に降りかかる。

「手術はきっとうまくいくから。大丈夫だから」

おばさんのやさしい声は、途切れ途切れになっていた。

涙色の声。




僕の心に後悔の波が押し寄せていた。
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