来い恋
翌日、出張から帰ってきた亮輔さんは超多忙だった。
会議や打ち合わせでほとんど顔を見ていない。
総務からの帰り、四宮さんとはすれ違う際に
例の件頼むわよ!って目で訴えられるし
気がつくと何度となくため息ついてる。
時計を見ると午後1時を少し回った。
仕事も一区切りしたのでお昼休憩しようと私物袋を持って
食堂へ向かった。

食堂は11時から2時までやってるが1時半を過ぎると人気のメニューが完売してることが
あるので気持ちも焦る。
仕事で何が楽しいかって言ったら食事しかないんだから・・・
私はエレベーターの前で早く!早く!と心の中で叫んでた。
するとふいに肩を叩かれた。
「吉野さん今からお昼?」

振り向くとそこには亮輔さんと同じ部の小野寺(おのでら)主任だった。
小野寺主任は亮輔さんとは同期で最近結婚したばかりだ。
「はい。お二人もですか?」
「そう。もう~腹減って死にそうだよ。今までこいつとずーっと一緒に会議会議でさー
2時からまた会議だよ。」

小野田主任、本当に疲れてそうな顔をして肩をがっくりと落としている。
「悪かったな。どうせ俺が出張に行ってたからだろ~~」
ふてくされてながら喋る姿が何だかかわいらしく見えてしまった。
すると小野寺主任がニヤッと笑い
「そうだ!吉野さんも俺たちと一緒にお昼食べようよ。今日はこいつのおごりでさ!」
「何でおれがお前におごらなくちゃならねーんだよ。吉野だけならわかるが」
「ああーひでーな。俺はお前の可愛い部下じゃないか。」
「何がかわいい部下だ!かわいいのは吉野だけでお前はキモい」
何気に私の事をかわいいと言ってくれるのは反則です!

それ以上にエレベーター待ちの女性社員の目が怖いんですが・・・
背中に突きささる視線に逃げ出したくなった。
「あの・・・漫才はそのくらいにしてください。もうすぐエレベータきますよ。
それに何気に私を引き合いに出さないでくださいね。」
それからすぐエレベーターの扉が開いたので乗り込んだ。
お昼一緒にと誘われたけどさっきの冷たい視線が気になったので
1人で食べようと決めた。
エレベーターが食堂のある10階に着くと
そそくさと降り、亮輔さんたちとの距離を取ろうと先へ急いだが

「吉野さん待って!席こっちだよ」

小野田主任の、のー天気な呼び声でほぼ強制的に3人で食事をすることになったが
はっきりいって生きた心地しなかった。

昼食後、一度事務所にもどったがお二人とも再び会議のため席を立った。
それから私も何かと雑用をたのまれバタバタしていたので
亮輔さんと会話らしい会話もなく退社時間となった。

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