ひつじとライオン


呆然と立ち尽くす俺。
咄嗟に作ったのであろうクロスさせた両手でそれを支える女。


え、なんで?なんでまた倒れてんの、あのチャリ。
なにあの女、吸い寄せてんの?え、こわ。


「うぐーーーーー、あーーーーー、もーーーーーー」


叫んでる。
どうやらあのクロスで自転車を退かそうとしているようだ。
それなら立ちゃーいいのに。
足も投げ出したままの体勢じゃ厳しいだろ。


「あーーー、……あーー」


声が変わった。
最後の「あ」は明らかに、


「もう好きにして」


諦めたのが分かった。


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