ひつじとライオン


見てられん。
貸して、と言えば情けない顔で「すいません」と言う女の膝から、ハンカチを取り上げる。
四角いそれを棒状にして膝を覆うと、女はビクッと体を揺らした。ビビリめ。


「はい」

「おぉ……」


おお、じゃねぇわ。


「何から何まですいません」

「いえ」


血が見えなくなったおかげなのか、女の表情は柔らかくなった。めでたしめでたし。
帰ろう、と腰をあげた時だった。遠くからうるさい足音に加えて「めーこ!めーこーーー!」と叫ぶ声がした。


そちらへ顔を向ければ女と同じ制服を着た女が、こちらへ走ってくる。
どうやら叫んでる名前はこの女のことらしい。


「じゃ、俺はこれで」

「あっ!ありがとうございました!」

「いえいえー」


もっと早く来てほしかったよ、お友達。
まぁでもおもしろいもん見れたからいいけど。


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