ひつじとライオン


女子が来ているという情報は尾びれのついた噂ではなかったらしい。
意気揚々と靴を履き替える悟の向こうから、「可愛かったなー」と言う奴がいた。
どうやらわざわざ見にいったらしい。
こいつらも悟と同じような思考なのだろうか。


まぁ、普段見ないとこで見るものは特別なんだろうな。
でも一歩外に出ればいろんな種類の女がいるのにな。


「怜央!はよ!」

「はいはい」


いつもと然程変わらない門までの道のり。
野次馬が誰かを囲んでるとかってわけでもない。そこそこに歩いてる奴らがいる、普段と変わらない放課後。
ただ、皆一様に同じ場所を見ていて。


「お!あれじゃね?」


悟が指したのは一人の女子。
生憎こちらを見ていないので顔はわからないが、肩より下の髪、腰に巻かれたカーディガン、スカートという出で立ちはうちの高校では異質だ。


「何やってんだろ」

「さぁ?」


何やらうちの生徒らに声をかけてるようだった。



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