ひつじとライオン


この数分の為に電車に揺られてきたのかと思うと心底むかついてくるが、だが仕方ない。
アイツがそういう女だということは分かってる。
どうせ大したことない用事だということは予想内だった。


まぁ、それが「この爪の色、どう?」だとは思わなかったが。


ブレザーのポケットに忍ばせていた煙草を取り出し、一本口に咥え火を点け煙を吐き出せば、幾分気持ちが安らいだ気がした。


そういえば学校を出てくる時誘われたんだっけか、と友人の顔を思い出し携帯を開く。
履歴から番号を出して発信。数回鳴った後、「うぃーっす、終わった?」となんとも気の抜ける声がした。


「あー、何処?」

『いつもんとこ。しっかし早かったねー』

「爪見せられた」

『はっ!?それが用事?』

「らしいね」


まぁ、真意は違うのだということは分かってる。
というか、本当にそれだけの用件で呼ばれたのだとしたら、いい加減うんざりだ。


< 3 / 44 >

この作品をシェア

pagetop