ひつじとライオン

悟はすぐに状況が分かったらしい。
「あぁ、羊ちゃんか」と指を鳴らした。
そういやそんな風に言ってたな。


俺らはその女に連れられて門から少し離れる。
どうやら『羊』も来ているらしく、別の場所でこの女と同じように俺を探しているそうだ。


別に会わなくていいよ、と思ったが、ここまでされて無視するのはいかがなものかという思い半分、悟が俺の腕を掴んで離さないので仕方ない半分でついてきた。


……が。


「め、めーこ……?」


女が戸惑いの声をあげる。
視線は上。
俺も悟も勿論上を見上げる。


「何やってんの」


ぽつり呟いたのは俺。
隣の悟は見上げた先の状況に「へっ?」と半笑いだ。


「あ!麻友(まゆ)!」


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