ひつじとライオン
麻友は昔から、いつもあたしを助けてくれる。
猫の肉球がおいしそうに見えて摘んだ結果、思いっきりひっかかれた時とか。
街で迷子になって見ず知らずの人を勝手に友達だと勘違いしてついてった挙句、全く知らない人でもうこの世の終わりだと泣いていた時とか。
男子に「チビチビ」バカにされた時も、逆に男子と仲良く遊んでて女子に無視くらった時だって。
それにあの時も……。
「……はっ!」
「ん?」
うっかり感傷に浸りそうになったけど思い出した。
鞄の中に入れてあるハンカチのこと。
「あのね、これハンカチ」
「うん」
「見て」
取り出して広げてみせれば、「……あらー、これは」と苦笑を浮かべる麻友。
あたしの口からは深い息が出て行く。
「つけおきしても落ちなくて……」
「血は落ちないとかって言うよね」
「すぐに洗えば落ちたんだろうけど」