ひつじとライオン


掛け直す、と言って電話を切りその女へ近付く。
下半身が自転車に乗られた女。
「うぅ」と唸る声がする。


「……大丈夫ですか?」


とりあえず声をかければ、ガバッと顔があがった。
ところどころ、土で汚れている。


「あっ、はっ!大丈夫です!すいません!」


何が?と、謝られたことに突っ込んでしまいそうになるけど、まずは自転車を起こしてやらないと、とそれに手をかけた。


「怪我とかは?」

「なんのこれしき!」


よいしょ、とそれを持ち上げれば、解放された女の下半身は、なんかいろいろと大変だった。
土で汚れてるし赤くなってるし、それになにより……。


「あ!」


見たくもないのに見えたし。



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