忠犬カノジョとご主人様
私がぶち切れていると、ソラ君が目をぱちくりさせた。
それから、ごめんとつぶやいて私を抱き寄せた。
「ごめんな……」
どうせ何に対してこんなに怒ってるのか分かってやしないくせに。
そう思いながらも、耳元でそう囁かれると、何もかも許してしまえるような気持ちになった。
「今度からはもっとちゃんと言葉にするよ」
「ご飯も、週一でもいいからちゃんと一緒に食べて欲しい」
「分かった」
「休日はどこか連れてって欲しい」
「分かった」
「手入れ法の分からない植物は買わないでほしい」
「……調べておくよ」
「ねぇ、ソラ君、私のこと、好き……?」
ずっと強気で発言していたのに、最後の言葉だけ何だか声が震えてしまった。
すると、ソラ君は見たことないような優しい笑顔で、キャミソールに指をかけて、
“今から証明してあげる”と囁いて、私を強く抱きしめたんだ。
――もともと同じ会社の同期だったソラ君。
私が5回告白してやっと付き合えることになったソラ君。
サプライズがどういうことなのかよく分かっていないソラ君。
意外と嫉妬しいなソラ君。
本当に全然掴み所のない彼氏ですが、
どうやら人間嫌いな所のある気難しい彼氏ですが、
どうやら私のことが、大好きらしいです。
「ソラ君とわたし」終