忠犬カノジョとご主人様
クルミとソラ君の日常
ソラ君の野望と嫉妬①
俺が今できることはなんだろう。
予想外のことや、ショックな出来事があったとき、俺は一度冷静にそう自分に問いかける。
こっち(日本)に来たのは12歳の時だった。
母親がファッションデザイナーで、父はインテリアコーディネーター。
そんな両親に連れられて、世界をあっちこっち旅してきた。
日本という所がどういう所なのか全く知らなかったけれど、12歳の春に初めて日本に来たとき、俺はここに住みたいと心の底から思った。
なぜならこの国の人間は基本的に無口で、自己主張の無い人間がほとんどだったから。
「ソラは本当隠れ根暗だよなあ」
そう言って、俺の唯一の友人である須玉が苦笑した。
会社の最寄駅が一緒の俺たちは、たまにこの喫煙所で出勤前に出くわす(お互い会社には喫煙所が無いのだ)。
「よくその性格でアメリカで通用したもんだ」
「……あっちでは頑張ってたよ」
「あら」
スキンシップが多く底抜けに明るくてパワフルな国は沢山あった。幼少期からそういう国には何度か住んでいたし、こういうものなんだ、と不思議にも思わなかったけれど、日本に来て衝撃を受けた。
日本人は曖昧が通用するし基本的に気が弱く会話が少ない。日本人は常に集団行動をする人種だとどこかで聞いていたが、近年では1人で行動する(今風に言うとぼっちと言うらしい)人も増えている。
個性が強すぎると潰されるし、妥協は大事だと誰かが言う。
要するに、ひっそりそつなく生きていれば、この国では平穏に暮らせる。
12歳の俺は、一瞬でそう悟り、高校からは日本に住む叔母に引き取ってもらい、日本に住むことを決めた。
俺の性分には、日本の方があってると思ったからだ。