忠犬カノジョとご主人様


「双葉さん! おはようございます」

「八神君! あの、これ!」

「えっ、なんですかこれ」

「この間のお礼、大したものじゃないけど……」

「えっ」


今日もいつもよりはやく出勤して、八神君の出勤時間に合わせた。

この間のお礼がしたくて、八神君が好きそうなブランドのハンカチを買った。

八神君は私がおずおずと差し出したそれを見つめて、戸惑った様な表情をした。


「双葉さんそんな……、僕大して仕事手伝えてないのに」

「ううん、本当に助かった! 受け取ってほしいの、お願い」

「……」


八神君は暫し困惑していたけれど、そっとラッピングされたハンカチを受け取ってくれた。

そして、にこっと笑い、


「これ、双葉さんが選んでくれたんですか?」

と、問いかけてきた。

「うん、あんまり男の人のブランドとかよく分からないんだけど、これは八神君っぽいなと思って……」

「嬉しいです、ありがとうございます」

八神君があまりにも爽やかに笑いかけてくれるもんだから、照れくさくて目を逸らした。

ま、眩しい……。ソラ君とは正反対の人だよ……。

「大事に使いますね」

「う、うん、ぜひ使って!」

「あと、海空さんと上手くいったんすね」

「えっ」

「それ」


動揺している私の指を、八神君がそっと掴んだ。

そして、左手の薬指に輝くそれに、ほんの少し触れた。

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