忠犬カノジョとご主人様
「え、ソラ君あの……」
「駅まで送るよ。本当は全然家この辺じゃないでしょ?」
「ば、ばれてたー!」
「はい。進んで靴履いてー」
ソラ君に背中を軽く押されて、私は玄関まで追いやられた。
私の仮告白は無かったことにされてしまったのかな……。
なんだか悲しくて、恥ずかしくて仕方なくなってきた。
「駅までの道、わかるんで大丈夫です」
「え、本当に?」
「はい、大丈夫です」
でも、本当の気持ちだったのにな。
最初は違う星の人だと思ってたけど、今はとても距離が近く感じるよ。
飲み会では見せなかったギャップも、暗い一面も、表では完璧に人と接せれる所も、少し黒い所も、全部含めて、あなたを知りたいと心から思ったのに。
勝手にイメージを押し付けてあなたを見ていたことがとても勿体ないと感じるくらい、素のあなたは魅力的だと思ったのに。
「……クルミちゃん」
「え」
扉をあけて出ようとした時、王子が私の名前を呼んだ。
「予想じゃなくて、本当になったらまた言いにきな」
「え……」
「待ってるよ」
―――あれが、王子とのそれはもう濃い出会いの1日だった。
待ってるよ、なんて言いながら私のことを5回ふったとんでもない鬼畜ぶりを発揮したソラ君だったけど、今はラブラブ(多分)だから問題なし。
ソラ君は一体私のどこを好きになってくれたのか本当に不思議だし、今まで聞けたことが無いけど。