忠犬カノジョとご主人様
え……?
隙あらば……?
何の話……?
八神君はそれだけ言い残して、この場を去って行った。
残ったのはものっすごく不機嫌なソラ君と、困惑状態の私。
「あの……今のはどういう意味……」
「自分で考えなよ」
「はあ……」
「クルミ、顔あげて」
「はい」
ちゅ。
ソラ君を見上げた瞬間、キスをされた。
「は……」
「隙があるって、そういうことでしょ」
「え」
「しつけが足りなかったな……」
そう言って溜息をつきながら、ソラ君が私の前髪をかき上げて、おでこにもキスをした。
なんだか犬扱いされているような気分になったけど、私は突然の出来事にただただ呆然とするばかりだった。
「クルミ、ぼうっとしてないで、お手」
「わ、わん」
「ははは」
――ソラ君と出会って3年が過ぎた。
私はどうやらこれからも順調に、彼に飼いならされていくらしいです。
何だか色々と波乱が起こりそうな気がするけれど、
この飼い主様の手を、離さずにいれば大丈夫なのかな?