忠犬カノジョとご主人様
ソラ君は軽々しく愛を口にしたりしない。
でも、その分、ご褒美のように甘い甘いキスをくれる。本っ当にたまにだけど。
だけど私は、その飴と鞭のせいで、どんどん彼にハマっていってしまうのだ。
本当に、恐ろしい程。
“想像もつかないの。海空さん以外の人を好きになる自分が、この先も全く”
……あれは私の、ゆるぎない本音だった。
「……あ、ソラ君待って」
「何を」
「あ、汗かいてるから……」
「俺もかいてる。どっかの誰かのせいで階段2段飛ばしで駆けあがったからな」
「ご、ごめんなさい…でも待って!」
話しているうちにブラのホックが片手で一瞬で外されてしまい、私は焦って彼の行動を制した。
だけどソラ君は、私の肩に顎をのせて、背中を撫でながら耳元でこう囁いた。
「今は黙って俺のことだけ考えて」
……未来の夫を嫉妬させたらこうなるってこと覚えておきなよ、と、そう忠告して、彼は意地悪く笑った。
私は、未来の夫という言葉に、一気に赤面してしまい、うかうかしている間に彼の熱に飲み込まれてしまった。
……ソラ君は、今まで付き合ってきた人の中で間違いなく歴代1位で扱いづらい人間だ。
でも、私のこの重すぎる愛も、彼は殆どスルーする勢いではあるが、受け止めてくれている。
喧嘩もするし、たまに寂しくてたまらないときもあるけれど。
でもきっと恐らく私には、それが丁度いいのだと思う。
不安定だけど、そんな風にして、私達は距離を縮めていくのだと、そう思う。