忠犬カノジョとご主人様
……私の為に階段を2段飛ばしで駆けあがるソラ君を想像したら、なんだかおかしくて少し笑ってしまった。
そしたら、ソラ君は、なに笑ってるの、と私の頬をむにっとつまんだ。
「ソラ君のこと考えてたの」
嘘はついていない。でも、必死なあなたを想像したら、ちょっと汗が似合わな過ぎておかしかっただけ。
ソラ君は私の言葉にふーんと呟いてから、私の左手薬指にキスをした。
「今後はもっとちゃんと自覚してね、飼い主様がいるってこと」
「私やっぱり犬なの……?」
「指輪じゃなくて首輪が良い?」
「やだっ」
「はは」
「ていうか、待って……明日八神君に会ったらどんな風に接しよう……」
「急だな。いいよ、セクハラ訴えて辞めさせな」
「鬼過ぎ!!」
「クルミ、俺のことだけ考えてって、言った」
「う」
「俺は同じ忠告を2度させる奴は評価下げるよ」
「ち、違う部署で良かった……」
私は正直今日一番の本音をこぼして、ソラ君のキスに応えた。