忠犬カノジョとご主人様
ソラ君と忠犬彼女①
少し昔の話をしようと思う。
「あの、好きです!」
「うん、ありがとう」
……今日で4回目の告白。
今日ふられたらもう諦めようと決心していた私は、あっさりと期待を裏切られ、絶望に打ちひしがれた。
私の思い人……同期のスーパーエリートであるソラ君は、今日も仕事終わりに勇気を振り絞って伝えた思いをそらもうあっさりとかわした。
ソラ君はいつも涼しげな薄い水色のシャツを着ている。そのシャツが、少しだけ栗色のソラ君の髪色と瞳の色とすごく合っていて、凄く好きだ。
ソラ君の帰りを会社から出て少し先の所にある喫煙所のそばで待ち伏せていた私だけど(ソラ君がいつも仕事終わりにここに寄るのを知っていた)、その時間も一瞬で無駄に終わった。
「そ、そうですか……」
「双葉さん、煙草吸うの?」
「い、いえ……吸わないです」
「こんな所いたら髪の毛に煙草の臭いうつるよ。帰りな」
「………」
そう言って、ソラ君は涼しげな表情のまま喫煙所に入って行った。
私は、いつもここでそんな彼を見送って、すごすごと1人寂しく帰ってた。
でも、もう今日限りでここで彼を待つなんて、バカなことするのも止めるんだ。
――――だったら、最後に何か一つくらい思い出が欲しい。ソラ君に想いを伝えたっていう、証が欲しい。
私は、勇気を振り絞ってソラ君の手を掴んだ。
そして、勇気を振り絞ってこう伝えた。
「あの、今日だけもう少し一緒に居たいです!」
「え」
「そ、そしたら……もう本当に、諦めますから……」
「………」