忠犬カノジョとご主人様
お前好みとか嬉しくねーよ!! もうこの服燃やして捨てたい。私は心からそう思った。
彼とは18歳の時に4か月間付き合った。私はまだ大学生になったばかりで、1つ上の彼は大人で女の子慣れしててそれはもうとても魅力的に見えた。
だから彼を手離したくなくて、必死になって色々なことに尽くした。でも、最終的にそれが別れる理由になった。私の愛は彼には重すぎた。
「元々クルミ、顔可愛かったもんな」
「え」
「てか今1人なの?」
彼が、話しかけながら私の肩に触れた。気持ち悪くて鳥肌が立った。
彼の視線が顔から肩、胸に移動していくのを感じて、私はついに声が出なくなって、体が震えだした。
……けれど、すぐに肩から手が離れた。そして、淡い水色が視界いっぱいに広がった。
……ソラ君の、広い背中だった。
「……彼女に何か用ですか?」
「あー……、彼氏さん?」
「はい」
え!? 何言ってるのソラ君!? しかも即答だったし!!
私はソラ君の背中に隠れながら驚いて目を丸くした。
「あー、じゃあ気を付けた方が良いよ。この子結構重いから」
―――元彼がソラ君に耳打ちした声が、微かに聞こえた。
やめて。そんなことソラ君に言わないで。
私は、“重い”という言葉が、あれ以来かなりトラウマになっていた。
傷つくからから開きたくないドアを開ける呪文があるとしたら、それは間違いなく重いという言葉だ。それくらい私に深く傷を負わせるには容易な二文字。
私は、ソラ君の背中に隠れながら、思わず耳を塞いだ。嫌な思い出と共に冷や汗がぶわっと吹き出た。
ソラ君は、そんな私を横目に見て、いきなりぐいっと腰を抱き寄せた。
そして、私の顔が見えないように、軽く頭を胸に押し付けて、