忠犬カノジョとご主人様
「俺はもっと依存して欲しいくらいですけどね」
と、意地悪な笑みを浮かべて、そう言い放った。
そして、私の腕を引っ張って、ソラ君はすたすたと歩きだした。
元彼の顔は見えなかったけど、多分相当間抜けな顔をしていたと思う。
ソラ君は、そのまま私を引っ張って早歩きで進んで、昼間はまだ人気の少ないガーデンプレイスに向かった。
美しく整えられた木々やお花と、煌びやかな噴水と、いくつかのベンチ。
1つのベンチに座って、私とソラ君は一息ついた。
彼は、疲れたようにため息をついて、首に手を回してそっぽを向いていた。
私はそんな彼の様子を、冷や冷やしながら見つめていた。
あんな面倒に巻きこんじゃって……しかも元彼だってきっとばれた……。なんだかすごく申し訳ないし、恥ずかしい……。
落ち込んで私も俯くと、ソラ君はそんな私に気付いて口火を切った。
「勝手なこと言ってごめん……」
「え……え!? こっちこそ面倒に巻き込んでごめんね!? あんな嘘までつかせちゃって……」
「言っちゃ悪いけど、君は男を見る目が無いな……」
「うっ」
「俺含めて、君は趣味が悪い」
「………」
そう荒々しく言い切ると、ソラ君はむしゃくしゃしたように髪をかき上げた。
「大体君も、調子乗るな生ゴミくらい言ってやればよかったんだ」
「な、生ゴミ!? 人に向かって生ゴミはいくらなんでも……」
「1人にさせた俺も悪いかもだけど……、まさかあんなことになるなんて予想もしてなかったし、できるはずないし、ていうかそもそも俺彼氏じゃないし、なのに焦って本レジに置いてきちゃったし」
「え!? 置いてきちゃったの!?」
ソラ君がこんなに話してる所、初めて見た。
彼がこんなに動揺しきっているなんて、かなり貴重だ……。
私は、ぽかんと大口を開けたまま、彼の説教を滝のように浴びた。