忠犬カノジョとご主人様
ソラ君とわたし②

家に帰ると、部屋は真っ暗だった。

手伝ってくれた八神君に何度もお礼を言って、あれから30分で仕事を終わらせることができた。

何もかもがしんとした部屋に、ゆっくりと足を踏み入れる。

ソファーには、いつものように疲れ果てた様子で寝ているソラ君がいた。


ソラ君、私、誕生日終わっちゃったよ。


寝ている彼に、心の中で呟いた。

届くわけが無い言葉を。


私は、いつもより乱暴に荷物を置いて、服を脱いだ。

いつもはすぐにハンガーにかけるのに、今日はもう疲れすぎてそんな気にならない。

小さな間接照明だけつけて、キャミソール一枚になって、ひとつ溜息をついた。


そしてふと、疲れてしまった。

25歳にもなって、こんなにも不安定な恋愛をしていることに。


もう一度溜息が出た。

そしたら今度は、じわっと涙も出てきた。


何してるんだろう、本当に。

私どうしてこの人をこんなに我武者羅に好きになったんだっけ。



―――ソラ君、あなたとちゃんと会話をしていない間に、

あなたが楽しみにしていた新ドラマはもう放送3回目をむかえたし、

同棲をしてからあなたが買った小さな観葉植物は、なぜか枯れてしまいました。

ドラマは全部録画してあるし、水もちゃんとあげていたのに、なぜでしょう。

そのことをあなたに伝えたいのに、そんな時間も私達の間には無いのでしょうか。



ソラ君、私があなたの毎日に入り込む隙間は、もう無いのでしょうか。

だとしたら私は、あなたにとって一体なんなのでしょうか。



あなたが寝ている間にひっそりとあなたが見たがっていたドラマをひとりで観ていたことは知っていますか?

あなたがオシャレだからと言って気まぐれで買ってきた植物、名前が分からないので手入れの仕方を調べるのに苦戦したことは知っていますか?

あなたが半分残す手料理に、どれだけ頭の中で栄養計算をしたか知っていますか?

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