忠犬カノジョとご主人様
ソラ君が、私の体をひょいと持ち上げて、膝の上に乗っけた。
向かい合って彼の膝の上に座っているこの体勢に、私は恥ずかしくて赤面した。
「そう思わない?」
「お、思います……、ご主人様」
「ふ、そこはせめて旦那様だろ」
――――――もともと同じ会社の同期だったソラ君。
私が5回告白してやっと付き合えることになったソラ君。
サプライズがどういうことなのかよく分かっていないソラ君。
意外と嫉妬しいなソラ君。
本当に全然掴み所のない彼ですが、
どうやら人間嫌いな所のある気難しい彼ですが、
私はこの人と、ずっと一緒に過ごして行くと、決めました。
5年後も、10年後も、
子どもが生まれても、おばあちゃんになっても、
私が犬みたいにしっぽを振って彼についていく様子が、ありありと目に浮かぶのです。
そのことをソラ君に伝えると、
彼は、信じられないくらい優しい笑顔を私に見せて、
幸せにするよ、と、そう呟いたのだ。
それから、「お手」と言って私に手を差し伸べてきたので、私は従順にその手に手を重ねた。
ソラ君は私の手をぎゅっと優しく包み込んで、
「よくできました」と満足そうに笑って、
私の頭を愛おしそうに、優しく撫でたのだった。
「ぼっちなソラ君と忠犬カノジョ」完結