【完】私と先生~私の初恋~
私は先生の顔を見ないように前を向いて、アハハと笑った。


もう2度と会う事はない。


このまま嫌われてしまっても構わない。


いや、むしろ嫌われて軽蔑されてしまった方が、気が楽だ。


私は話しながら、そんな事を考えていた。


「そんな仕事を始めるし、私はどんどん先生達の世界から離れていきます。」


「……。」


「だからこれ以上、先生を巻き込みたくないし、迷惑かけたくないんです。


私は先生に、幸せになって欲しいから。」


言い終わってホッと溜め息をつく。


先生が隣で固まっているのがわかった。


これでいいんだ…


昔のように痛くなる胸の締め付けを我慢しながら、私はただじっと夜景だけを眺めた。


先生は相変わらず固まっていて、私はじっと前だけを向いていた。


このままこうしていたら、私はきっとまた泣いてしまう…


そう思って、私はバッと立ち上がった。


固まっている先生に振り返る。


「もう行かないと。今日、卒業式が終わったらお店の人に電話する筈だったんですよ。


…無視して今サボっちゃってますけど。」


私はニコニコしながらそう言った。


先生はニコリともする事無く、少しだけ下に俯いた。


「…最後に会えて嬉しかったです。


…実はずっと会いたかったから。」


そういい鞄に手をかける。


「それじゃ、先生、お元気で…」
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