『なんやねんうっとおしい』


『そんなん言わんと、なぁ。せっかくひさしぶりに会えてんからぁ』



懐かしいとまでは行かないけれど、聞き覚えのある後者の声。



「どしたの?あおいん?」



「ねぇ、マコちゃん、あれって…」



「んー?あ、健二くんだっけー?」



「そう、そうだけど、その向かい側にいるのって…」



「えー?あ!!!ぽっと出とか言われてる、『Y』だー!こんなところで会えるなんて!!!」



そう。
事件とは。



ちょっと前にあたしが大ファンになった。


Y


本名、年齢、顔、身長、全て非公開の謎のアイドルだ。


いつも必ず毎日どんなときでもサングラスは欠かさない。



それも真っ黒のイカツイサングラス。


今は夏だというのに、帽子とマスクをして不審者のような格好をしたY。


だけど、特注品らしいサングラスをかけていたので、すぐに分かった。



何度か握手をしたこともある。


覚えてくれているかは分からない。
だけど、こんなチャンス2度とない。


「マコちゃん、行くよ!」



握手を求めてYの元へ。
< 112 / 267 >

この作品をシェア

pagetop