「てか光、コンビニの場所分かるの?」




あれから1分程沈黙があって、あたしは思ったことを聞いた。




「知らん」






何食わぬ顔でそう答えた光。



「知らんって…」



「都会やし、歩いとけば見つかる思て」



あぁ、なるほど。



「あたしは迷子になりたくないから調べたり聞いたりしちゃうなぁ」




「それもありやけどな。てかそれのがええけどな。俺人見知りやし」




は!?



人見知り!?




「どこが!?」



「うそうそ。近所付き合いがあんま得意やないだけや」



あたしにあんな馴れ馴れしくしといて人見知りは絶対ないよね。



うんうん。



でも…。




「なんで近所付き合いが苦手なの?」



人懐っこいし、話してても楽しいのに。



「俺な、つい最近まで金髪やったんよ。やから柄悪いって」



金髪か…。



今は黒だから想像しにくいけど、顔が整ってるから普通にかっこいいと思うなぁ。



「そっか、ヤンキーだったんだ」



「ちゃうちゃう。調子乗っとっただけやって」



それをヤンキーって言うのよ。



「光の金髪かぁ。見てみたいな」




「え?」



あたしが言うと、少し驚いたような顔をした光。



「なに?」




「いや、そんなん言われたんはじめてやったから」



ちょっとうつむきながら言う光。



「なんで?かっこよさそうじゃん。写真とかないの?」




「似合わないって言われとったんよ。つるんでた奴らからも黒にせぇ黒にせぇって言われ続けてた」



「ふぅん。それで黒にしたんだ?」



「うん」



言いながらスマホを操作する光。




「これが俺」




光は画面を指差しながらあたしにスマホを渡してきた。



2人してコンビニの目の前で立ち止まった。



そして画面をのぞくと…。




「わぁ…」




「ドン引きしとるやろ」



苦笑いで言う光。



「ううん。違うの。やっぱりかっこいいと思って…」




勝手に口が動く。




「全然似合わなくないじゃん…。すごくかっこいいよ!」




「え、ちょ…」



勢いよく画面から光に視線をずらし、光に詰め寄ったあたしに驚く光。




「そ、そうかぁ?」




一歩後ずさりしてあたしと距離をとった光。



「自信持っていいと思う」




だけどまた詰め寄るあたし。
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