言葉を濁らせて黙る光。



なんでかっこいいって言われるのが嫌なの?



ブサメンへの嫌味?



でも、嫌味を言うような子じゃないと思うしな。



なんか嫌なことがあったのかな…。




「分かった。じゃあこれからは言わないようにするよ。
だけど、無意識に言っちゃってたらごめんね。
昼間手伝ってる時、無意識だったからさ。なるべく、気を付けるね。行こ」



光の表情を観察しながら慎重に言葉を紡いだ。



そして手を引き、ようやくコンビニに入った。




本当ならもう家に着いてもおかしくない。


お母さん、待ちくたびれてるよね。



10分以上経っちゃった。




「気、遣わせてごめんな。ほんま」




なんだかひどく落ち込んでいる光。




「こっちこそ。なにも知らないで嫌な言葉連発しちゃってごめんね。
お母さん待ってるからさ、早く買っちゃお?」




コンビニに入ってもなお、ごはんを手に取らない光。




そんなに嫌だったのかな?




だったら悪いことしたなぁ。



あたし、無神経だったかな。




「…うん」




暗く低い声で返事をした光に、レンジで温めるだけのごはんが3つ入ってるパックを渡した。




すると少し明るい声で光が言った。




「うち、レンジない」



…。




「じゃあ、どれ買うの?」




あたしが光の顔を見ると、少し笑って光が歩き出した。




向かった先は惣菜コーナーだ。




「これ買えば店員が温めてくれるやろ?」




1人前にパック詰めされた白いごはんを手に取ってあたしに見せる。




「あぁ、なるほどね」




光って結構賢いのかも。




♪ピロリロリン…ピロリロリン…




よくある携帯の着信音がどこからか聞こえてきて、光がズボンのポケットからスマホを取り出し、あたしにごめん、とジェスチャーし、電話に出た。




「なんや?」



さっきまでの声のトーンが嘘のように普通に電話に出た光。



「あぁもう終わった。またすぐあれやと思って半分くらいやけど。

は?いつ?無理無理無理。来んといてまじで。
迷惑や。
アパートやで。近所迷惑やから。
また嫌われんの嫌やで」




同級生の子かな?




「やめとけって。今買い物中やからまた後でかけるわ。
あぁそうや。別にええやろ誰と行こうが。早よ宿題やれや。知らんて。ほんじゃ!」




光のスマホからはまだわずかに声が聞こえていたが、光は一方的に切った。




「同級生が遊びに来るって?」




切って早々口を開いたあたし。




「そうや。ほんま迷惑やわ」




そう言いつつも少しだけ嬉しそうな光。




素直じゃないなぁ。
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