◇◇◇◇◇



………。


タクシーに乗り込んで私は考えた。


優輝さんは光に言われてあたしのところに来た。


それなのに今、さっきの電話で光はお願いしていた。


時間が戻ったの?



「優輝さん」


「な、なんだ」


動揺してる?


「光に言われたって」


「あ、あぁ。
それはつまり、…つまり。

嘘だよ…」


嘘。ということは?


自分の意思で来てくれたというのか?


いや、そんな馬鹿な。


「けど、俺がこっちに来てたのは本当にたまたまっていうか。
死のうとしてるとまでは考えてなかった。
makoのことを聞いて、友達の少ないお前は1人になると思ったから、アパートに行こうとしてた」


タクシー車内で静かに話してくれる優輝さん。

涙が頬を伝う。


「makoのことは健二が一人って人から聞いて、俺に伝わった。
健二って何気に顔広いからな」


「グズっ…」



「泣きすぎじゃね?」


と言いつつも自分の肩に抱き寄せてくれる優輝さんはいい人なのかもしれないと思えた。
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