大学の門には1台の車が停まっていた。


真っ黒のワゴン車。

そこに乗ってと肩を押されて光とともに乗り込んだ。

運転手さんは光の元マネージャーの
伊藤秀和さんという人らしい。


行き先は、都内の高層マンション。

光の家。



中に入ると殺風景で、なにもない。

ベッドの上に数冊の雑誌と開きっぱなしのクローゼット。

それ以外、本当に何もない。



「ここで、生活してるの?」


「寝るだけやけど、一応」


キッチンにはお皿が1枚もなく、コップ1つで食器棚が寂しかった。


「葵、あの…今まで、本当にごめん」


「ん?」


どうして光が謝るの?


「色々隠して、騙すようなことして。
本当に…申し訳ないことをした」


「光が悪いんじゃないじゃん。
…お父さんでしょ?」


光は、なにも悪くない。


「そう…やけど…。
葵にだけ、秘密にしてた」


うん、そうだったね。


「でもそうやってあたしを守ろうとしてくれたんでしょ?
いつも光は、あたしを守ってくれたじゃない」
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