部屋の中にいたのは1人の男性と。



痩せ細ってかつての面影を失くした。



「マコちゃん…」



目は虚ろで
ボーッとしていて
今にも死にそうなマコちゃん。


絶望に満ちた、誰も寄せ付けない雰囲気。


無気力に見えるけど、なんとなく威圧感を感じて、光の陰に隠れてしまう。


ゆっくりとあたしを見たマコちゃん。


笑った。


けど一瞬で鋭く光る目に変わった。


「なにしに、来たの」


消えそうな声。


「なんで平然としていられるの?」


徐々に強くなる口調。


「なんで、人を殺したのにここにいるの!?」


立ち上がって強くキツくあたしを睨みつけるマコちゃんは、あたしの前にいる光を無視してあたしの方へ来た。


「お前の顔を見てると気分が悪くなる…」


ポケットから小さなケースを取り出して、震える手で中の錠剤を口に運んだ。


ガリガリと噛む音が聞こえる。


それは、何?
何かの薬?


ケースを投げ捨ててまた一歩あたしに近付いて来た。


すかさず光がマコちゃんの真正面に立ってあたしを隠した。


「なんだよ、お前も殺されちゃうぞ?
いいの?
殺されたいの?逆に?あっはっは、ウケる。
どけよクソガキ!!」


ペシッと高い音が聞こえたと思うと、マコちゃんが光を両手でどかそうとしていた。
どうやらあの高い音は光の顔をはたいた音だったようで、チラッと見えた光の頬が赤くなっていた。


黙って反抗する光にさらにムカついたのか、マコちゃんは光を蹴飛ばしてしまった。



さすがに耐え切れずあたしより後ろに倒れこんでしまった。

そんな光に追い討ちをかけるように跨って胸ぐらを掴んでいた。

怖くて言葉が出ないあたしと、冷たい目で見ているだけの男性。


マコちゃんだって一応男だ。
それなりに力はある。


今は痩せてしまってほとんどが骨だけど、高校の頃は多少筋肉もあった。


身長も高くて圧倒的に有利な立場であるマコちゃんは、光の首を潰そうとしていた。

やめて…


マコちゃん…。
< 218 / 267 >

この作品をシェア

pagetop