アパートの階段を降りると、そこにはもう光がいた。




「ごめん、待った?」




って言ってもまだ待ち合わせ時間より前だけど。




「お、来た来た。待ってへん…で…」




振り返ってあたしを見た光は固まってしまった。



え?なに?



なんかおかしい?




「なによ?」




「あ…いや…。だって…。すごい顔…」




言いにくそうに言葉を繋げた光。




すごい顔ってなに?




「どういうこと?」




「いや…。悪く思わんといてな?
似合ってへんよ…。
むっちゃ大人なメイクやん。
…せっかくのべっぴんさんが…。
もったいないっちゅうか…うん」



「…」





がんばって大人ぶったメイクをして似合っていないと言われたけど。




それが嫌で黙ったんじゃない。




お世辞を言ったような軽い顔じゃなくて。



本当に思ったことを言ったような、真剣な顔だったから。




なにも言い返せなくなってしまった。





「ごめん…気分悪くしたよな」





「ち、違うの…。このメイクは、大人ぶったメイクだから。
いいの。
でも、べっぴんって…」




「あ…。ほんま…やで。
かわいいより美人やなって思ってん。
最初に見たときから。
やからさ?そんなんして隠さんといてよ…」




素直に嬉しかった。




「分かった。でも今日だけはこれで…」




「ん。今日だけ」
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