スーパーに着いてカゴを取り、野菜売り場を回る。




「今日はね、あたし特製の野菜炒めを教えてあげる!」




もやしを取りながら光に言うと、光は笑った。




「ほんまに簡単やな。
炒めるだけやん」




「味の加減とかあるでしょ?
それよ。
あたしが教えるのは」




「そんなうまいんかいな。
楽しみやわぁ」




小バカにしたように笑う光だけど、光は卵焼きも作れないくらいの超低レベルじゃん。





「当たり前よ!すっごい美味しいんだから。ちゃんと覚えてよ?」





「はいはい」





「んーっと。もやしと人参、玉ねぎ、豚肉。シンプルにこれくらいにしようかな?」





「ニラ入れへんの?」




ギクッ




「え、ニラ…?うちの家は入れない…かなぁ」




ニラは世界一嫌いと言っても過言ではないくらい嫌いな野菜だ…。




ニラを入れたら、どんなに味付けがうまく行ったって食べられない。




「そうなん?美味いのになぁ」




「あ、あはは、そうなんだ…」



このまま話が終わればよかったのに…。




「なぁ、入れてみ」




「え!?」





さっさとお肉売り場に行こうと思ったのに…!




「体にもええねんで」




「そ、そりゃそうだけど…」




「…ふっ。分かったで。
葵、嫌いなんやろ?」




また小バカにしたような笑顔であたしを見る光。




「そ、そんなんじゃない…よ…」




「ほな入れてみようや」



光がニラを取り、あたしの目の前でヒラヒラさせて笑う。




光ってもしかしてSなの?




絶対楽しんでるよね?





「うっ…ま、また今度ね」




「素直やないなぁ。嫌いなら嫌いって言えばええのに。
可愛げのないやつや」



持っていたニラを元の場所へ戻しながら言った光。



「だって、バカにするから…」





「ふふふ」





否定しないってことは肯定だから…やっぱりS…。
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