「ふざけんなよ!邪魔だったら物使ってねぇで口で言えよ!」




ちょっとすいません、って言ったじゃん。



「中野さん、ちゃんと声かけながら前に行ったよ」



「あぁ?」




あたしが言い返す気力を失っていると、後ろから声がした。




「自分たちが騒いでた声で聞こえなかったのを中野さんのせいにしないでよ」




「誰だよてめぇ」




「話そらすなよ。女王様気分もいいとこ」




「はぁ?」




「なによ?図星で悔しい?」



突然現れた謎の女の子と睨み合う女。



そろそろ先生が来ちゃう気がする。




「お前、まじで許さねぇ」




「なになに?
あんたが許さないと死刑にでもなっちゃうのかなぁ?」



なんて気の強い子なんだろう。



ここまではさすがにあたしでも言えない。



「こういうところでしか粋がれない無様な女って本当にいたんだね?
教えてくれてありがとう!」




本当にすごいな。



もう怒りを通り越してる感じで震えてるよ、この女。



と思った瞬間。



謎の女の子に詰め寄り。



パンッ



怒った女は謎の女の子にビンタした。




リアルに痛そう…。




「おいおいおいおい、なにやってんだお前ら!」



ビンタの直後に先生が2人と見覚えのある人が駆け寄って来た。



「ひ、光?」



「葵やん!どうしたん?ぶたれたん?」



「あ、いや、こっちの子が」



光があたしの顔に手を当てて心配してくれたけど、あたしじゃない。



ていうかなんで光がいるの?



「澤口!井手!職員室に来い」



「は?うちなんも悪くねぇし。行く意味じゃん?」



「澤口が殴ったんだろ、早く来い!」



「意味分かんね。キモー」



澤口と呼ばれた怒った女が文句を吐きながら先生の後を付いて行った。



一方、井手と呼ばれた謎の女の子は、しばらく光を見てから小走りで職員室の方へ行った。



光は気付いていなかったけど。



「なんで言い争いになったん。葵はなんもされてへん?」



光はいつまでもあたしの心配をしてくれた。



「大丈夫だって。軽く突き飛ばされただけ」




「突き飛ば…あいつ…許さねぇ」




あっ…標準語になっちゃってる…。



やばかったかな…。



「大丈夫だよ、あたしのカバンが当たっちゃったからだから」




「ほんまか」




「うん、周りの人にも聞いてみなって。あたしが悪かったの」




「そうけ」




光…怖い。
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