あの後、あたしは職員室に行くことを全力で拒み、急いで新しい教室へ行った。




光がなんであの場にいたのかは分からないままだけど、それは後で聞けばいいかな、なんて思っていた。




教室に入り、黒板に貼られた座席通りの席に座ってボーッとしていた時だった。




後ろから肩を叩かれ、振り向くとそこには。



「あ、さっきの、井手…さん?」



気の強い謎の女の子がいた。




「綾美でいいよ」



「あ、綾美ちゃん」




「葵って呼んでい?」



「…うん」




本当はあんまり関わりたくないけど、助けてもらったし…。





「…さっきはありがとう」




「ん?あぁ、澤口ね」




ぱっちりした目をパチパチさせながらあたしの隣の席に腰掛けた綾美。



「あいつ嫌いだったんだよねー1年の時から」



おろされたストレートな髪の毛の先をくるくるいじりながら言った。




「…そうなんだ」




「だからチャンス!って思ったの」



「…なるほど」
「ていうか、なんであたしのこと知ってるの?」



「え?だって有名じゃん」




「え?」



有名?



「頭いいんでしょ?」




「え、いや…」




「いつもテストで3位以内に入ってるって聞いたよ」




まぁ確かにそうだけど。




「それで有名なの?」




「うん、知らなかったの?」




「…はじめて知った」




「勉強は出来てもそういうとこは鈍いんだね」




ズバズバ言うなぁ。



「あんまり興味ないから…」




「勉強しか!って?」




「そういうんじゃないけど…」



「てかさぁ、あの子誰?」




今まで冷めていた綾美のぱっちりお目目が急に輝き出した。




「光のこと?」




「光くんって言うの?どういう関係?」




ライオンが獲物を狙うような目なんだけど…。




「お、同じアパートに越して来たの」




「へぇ。恋人とかじゃ?」




「…ないよ」




「そっかぁ。恋人だったら応援してあげたかったなぁ」




…この子、嘘ついてる。




応援するどころか、光を欲しがっているようにしか見えない。




「あはは…」




「光くんは葵のこと好きそうに見てたよねぇ」




「え?そうかな…」




なんだか怖いんだけど…。



綾美の目がギラギラしてる…。




「もう、葵は鈍感だなぁ」



「恋愛とかもしたことないから…」




「そぉなんだっ」




なんでそんなわざとっぽい反応するんだろう。




女の子って裏でなに考えてるか分かんないから怖いよね…。
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