「葵、もうご飯にするでしょ?
あたしたちも肉じゃが食べましょ」




「うん」




キッチンへ向かうお母さんの後について、晩ご飯の準備をする。




テーブルをふいてから、2人分のお箸とコップをテーブルに並べる。



食器棚から取り皿を取ってそれも並べた。



お父さんは単身赴任でいない。とは言っても、もう何年も帰ってきていないから本当は別の理由だったのかもしれない。




あたしは小さかったから、何も知らない。



お母さんも話そうとしないから、あたしも聞かない。




会いたいと思うこともあんまりないし。




これくらいの年の女の子でお父さんと仲がいいのもそんなにいないみたいだし。



人の家がうらやましく感じることもない。




だからいいんだ。




いなくたって別に。




今までも困らなかったしね。




それでも、帰ってきたときは迎えられたらいいのかな。
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