メガネはずしちゃダメ!
「もしもし、何?」

何となく黙ってしまうあたし。

『智久~、今からこない?

仕事もう終わってんでしょ~…』

トクン

聞こえた声に、反応するように静かに鳴り出した。

『女の人…の…声…』

多分これが、
さっき芹沢を帰したくなかった理由。

機械音からでもわかる、
少し艶のあるその声は綺麗な女の人のものだって。

締め付けるような苦しさがあたしを冷静じゃなくさせる。

「あぁ、いかねーよ疲れるし。」

そういつもの芹沢の調子で答えていた。

『ぶー、つまんない!

いつも相談のってんじゃん!』

それでも、食い下がらない女の人。

「あー、それもういらなくなるかも、

じゃぁな他の男誘え。」
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